警視庁の副署長だった男性(66)が、インターネット上のホームページ(HP)に、1995年にあった女性市議の転落死について男性が指揮した捜査はデタラメだったなどと記載されたことは名誉毀損に当たるとして、同HPを運営していた都内の市議2人を相手取り400万円の慰謝料の支払いなどを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は29日、市議2人に10万円の支払いを命じた東京地裁判決を支持、市議の控訴を棄却しました。
市議らは、女性市議の転落死が他殺であると主張した根拠として、女性市議の両上腕内側に皮下出血を伴った皮膚変色部があったことを挙げましたが、高裁は「司法解剖鑑定書には、損傷が他人と争ってできた可能性があることをうかがわせる記載はなく、(市議2人が見解を求めた)医師の意見書に記載されているとおり、その生成原因として、他人ともみ合って上腕を強くつかまれた可能性があることが認められるだけであり、他人に突き落とされて転落死したことまで推認できるものではない」と退けました。
また、転落死前に女性市議が人と争った気配がないことや、転落後に意識があるのに救助を求めなかったこと、落ちたことを否定したこと、転落箇所から真下に落下していることなどを挙げ、「本件転落死が殺人事件であると認めることは到底できない」と指摘しました。さらに、「別件訴訟の結果により、(救助を求めなかったことや落ちたことを否定したことなど、転落死当時の状況の)事実を知っていたのであるから、これらの事実を無視又は等閑視している」と他殺であると信じる相当性も否定しました。
一方、女性市議が起こしたとされる万引き事件について市議2人は、真犯人の服装と当時女性市議が着ていた服装が異なることと、目撃者の証言を基に、えん罪を主張していましたが、高裁は、市議2人が女性市議の服装として作成した再現写真は、「アリバイの裏付け資料としてアリバイを裏付けることができないレジジャーナルを提出するなどしていることに照らすと、再現写真なるものは必ずしも採用することができない」と指摘。
目撃証言についても「女性市議が本件事件の犯人であることをうかがわせるものであり、万引きをしていないことを裏付けるものということはできない」と述べる一方、万引き被害に遭ったと主張している洋品店店主については、「女性市議が万引きをしたことを明確に供述しており、市議らが提起した別件訴訟においても、いずれも供述に信用性を疑わせるものはないとされている」と認定しました。
市議2人は別件訴訟判決によって、これらの真実性や相当性が認められると主張しましたが、例えばいわゆる潮事件判決については、「女性市議が窃盗被疑事件の犯人の可能性は相当程度に達するものと思われるが、なお女性市議を本件被疑事件の犯人と断定するには足りない、女性市議の死因が自殺であるとみる余地は十分にあるが、なお女性市議が自殺したとの事実が真実であると認めるには足りないとしたものであり、本件転落死が殺人事件であること、及び女性市議が万引きをしていないことが真実であるとしてものではなく、控訴人ら主張の真実性を否定する趣旨であることが明らか」としました。
FM放送事件判決についても「本件損傷が他殺を疑わせる証拠となるようなものであることについての相当性について判断しただけで、その真実性については判断しておらず、まして、本件転落死が殺人事件であるとしたものでない」と指摘。「記事で摘示された事実の主要な点について真実性及び相当性が認められない」と結論付けました。
今回の判決は非常に重要な判断を示しており、今後、各裁判所で展開される民事訴訟などに相当な影響を与えるものと見られます。また、この問題を追い続けているジャーナリストの宇留嶋瑞郎さんの「ブログマガジン エアフォース」(http://pullman.blog117.fc2.com/)でも近く、この判決についての詳細な解説記事が掲載されるものと思われます。
新年早々矢野木っ端微塵。まあ、これで「高裁も創価学会の手に落ちていることが確認できました!」とか強弁できるネタが増えてよかったな。